SEの苦悩〜最先端のIT業界の裏側は〜

私は2000年に社会人になり、その社会人生活の大半の時間をシステムエンジニア(SE)として過ごしてきました。ですので、中小企業診断士・プロコーチとして独立した今でも、SEに対する思い入れはとても強いです。ユーザー企業を支援しながらも、「SEに幸あれ」と心から思っています。

SEは時代の最先端にいるように見えて、随分と辛い思いをしています。私のSEの時の苦悩を振り返ってみたいと思います。

機械や衣料品、食料品と同様、情報システムも人間が作ったものです。いくらがんばっても残念ながら「壊れるもの」です。しかし、人間が作ったものであるにも関わらず、なぜか情報システムは「万能」と思われがちです。「壊れずに動いて当たり前」という前提で見られるので、「当たり前に動いていること」に対して、なかなか有難みを感じてもらえません。

「当たり前に動く」ためには陰で必死の努力があります。SEは、システムを深夜、徹夜、そして早朝の時間帯など、お客様がシステムをあまり利用していない時間帯を使ってメンテナンスします。これを「夜討ち朝駆け」と言っていました。昼間休めるかと思ったら、残念ながら、深夜・早朝作業の準備のために、昼間の時間が割かれてしまうことになります。

また、ユーザー企業からは急な資料作成の依頼もあります。徹夜で会議して、資料を作ったこともありました。仕事を受注しお金をいただく側の立場ですので、当然のことかもしれません。ただ、お客様が自身の社内で説明するための書類をシステム会社にどこまで作成を委ねてよいものか、という程度の問題があるでしょう。

もちろん他の業界にも、同じような苦労をされている方はいらっしゃいます。他の業界を見られる中小企業診断士の立場に移ってから、ようやく分かってきました。
私はSEから中小企業診断士に転身した後、いろんな業界の方とお話させていただき、叱咤アドバイスをいただきました。「SEの常識は世間の非常識」と感じるところも正直多く出てきました。服装マナーしかり、出勤時刻しかり、メールのマナーしかりです。

こんな状況にあっても、業界最先端の知識を吸収しながら仕事ができるのは楽しいものでした。知的好奇心旺盛な方にとって、SEは素晴らしい仕事です。ITは変化が激しいので、「変化を恐れることは許されない仕事」、それがSEの仕事です。

楽しい思い、楽しい結果を残したいならば、その過程での大きな苦労はつきものです。苦労が大きければ大きいほど、その後には素晴らしい将来が待っています。

次回は、「SEの苦悩」のもう一方にある「ユーザー企業の苦悩」について考えてみます。